【完璧主義の罠】「~せねばならない」に達成感を奪われたきみへ
ねぇ、ものしりんご。ぼく、この間すごく頑張ったんだ。なのに、終わった瞬間、胸がスカッとしないんだ。「次は、もっともっと完璧にやらなきゃ」って気持ちだけが残って、全然自分を褒めてあげられないんだよ…。
それは本当につらいね。君は頑張っているのに、自分の頑張りを認めてあげられないのは、心の中に**「〜せねばならない」という強い禁止令**が働いているからだ。
禁止令? 誰にも強制されてないのに、なんでぼくは自分に厳しくしちゃうんだろう?
君が感じるその「〜せねばならない」という声の正体を、心理学の交流分析(TA)では「禁止令(ドライバー)」と呼ぶことがある。これは、子ども時代に親や先生など、重要な他者から繰り返し投げかけられたメッセージが、心の奥に定着してしまったものだ。
例えばどんなメッセージ?
特に完璧主義の傾向が強い君の場合、「完璧であれ」「一番になれ」「もっと頑張れ」といったメッセージだ。君に期待をかけた大人たちの高い達成基準が、君の心の中で絶対的なルールになってしまったのかもしれない。
...実は、その声の正体を知るだけで、君を縛る力が弱まるんだ。君のこのルールは、今の君が自分で選んだものではなく、過去に内面化された『古いプログラム』なんだ。知ることこそが、その呪縛を解く解毒剤になるんだよ。このプログラムは、君が自主性を取り戻すために、自分で書き換えることができるものなんだ。
ああ…そうか。ぼくはいつも「満点の状態」じゃないと、頑張ったことにならないって思ってたのかもしれない。でも、それが満たされないと、いつまでも心が休まらないんだ。そして、すごく疲れちゃうんだよ。
その通りだ。君は、『満点じゃないと、頑張ったことにならない』というルールを無意識に作ってしまったんだね。
そのルールが、君の心の中に出来上がってしまった背景には、「頑張り(努力や行動)」そのものではなく、「その成果(結果)」が君の自信と強く結びついてしまったことがあるんだ。
だから、満点(最高の成果)じゃないと、君は自分の存在に自信が持てず、不安になってしまう。この不安から逃れるために、「ミスや手抜きで評価を下げないように、やれることは全部やらなきゃ気が済まない」という禁止令を、心が自動で発動し続けているんだ。
つまり、「満点」を追い求めるのは、君の自信が揺らがないようにと、心が必死に働かせている生存戦略なんだ。君のせいじゃない、過去の環境の産物なんだよ。
ああ……!頑張ってる自分じゃないと、安心できなかったってことか!
そう。君は安心が欲しくて、終わりのない頑張りを自分に課し続けているんだね。これは君の能力の問題じゃない。君の内なる禁止令が、自信を守るための『生存戦略』として、無意識に作ったものなんだ。そして、今はそれが「不要な防御」になっているんだよ。
さあ、その内なる禁止令の呪縛を緩め、自分で決める力を取り戻すための具体的な次の一歩に進もう。頑張り屋の君が、自分自身に優しくなるための方法だ。
Step1. 「結果」ではなく「成長」を意識する優しい習慣
君が持つ「頑張り続ける力」を、もっと楽に、君の味方にするために、頑張りの定義を変える練習が必要だ。何かを達成しようとしたとき、「できたこと」ではなく、「そこで自分が成長したこと」に意識を向けてみよう。
成長? それってどういうこと?
例えば、目標に満たなくても、「一歩踏み出した勇気」や、「その途中で費やした時間と労力」、「失敗から学んだ新しい知識」を、意識的に数えてごらん。君はいつも「成果(結果)」だけで自分を評価していた。でも、成長は常に過程にある。その成長に光を当てることで、満点ではない自分にも心からOKを出せるようになるんだよ。
Step2. 「すべき」の裏にある「したい」を見つける心のワーク
次に、君の行動の動機を「外発的(〜せねば)」から「内発的(〜したい)」に切り替える練習だ。
「〜せねばならない」という思考が浮かんだ直後に、意識的に立ち止まって自分に問いかけてごらん。
- 「これをやらないと、誰かの期待を裏切る? 評価が下がる?(外発的動機)」
- 「そして、本当は私は、何を感じたい? 何をしたい?(内発的動機)」
えっと…「家事、ちゃんと全部やっておかなきゃ」の裏は、「本当は、ただ、自分の好きな本を読む時間が欲しい」…か。
そう。自分の「〜したい」という感情を意識的に見つけ出すことで、行動の主導権が「古いプログラム(禁止令)」から「今の自分(自分で決める力)」に戻ってくる。この練習こそが、達成感を再び感じられるようになるための、最も大切な一歩なんだよ。
ありがとう、ものしりんご!自分で自分を許してあげるって、こういうことなんだね。

